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2024.05.30

小出兼久コラム

煉瓦物語/持続可能な住宅とは

住宅のトレンド

住宅の設計にあたってトレンドつまり流行は、無視のできない存在です。
新しい住宅では〇〇が流行っていると聞き及んだならば、「なるほどそうか」と、それを新しい家へ取り入れようと検討をされる方も多いのではないでしょうか。

トレンドというのは、大小さまざまな形で存在します。例えば、煉瓦の家というのは、世界的なトレンドですが、トレンドにはもっと小さな要素、例えば、大理石を床やキッチンの天板に使いたいとか、流行の照明器具を付けたいとか、そういうものもあります。また、住宅に付帯する庭についても流行り廃りがあります。トレンドというものはどのような位置づけかなのかと言えば、ある意味では、人それぞれの要望の最大公約数的なものが(多くの人が取り入れているという意味で)、トレンドだと言っても過言ではありません。

しかし、トレンドの大部分は、私たちのコントロールできないところで発生するものです。実のところ、最近のトレンドの多くは、新型コロナウィルスの流行による波及効果で生じています。これはなにも住宅だけの現象ではなくて、製造業をはじめとする産業の構造も、施設や文化の在り方も、空間の意味することも、私たちの健康に対する習慣も、世の中のすべてが、予期せぬコロナ禍に遭って大きく変わりました。そうして、「そのような世の中ではこうあることが好ましい」という最適解が専門家によって生みだされ、その中から、多くの人々に支持されるトレンドが生じてくるのです。

住宅に的をしぼって考えてみます。
私たちのライフスタイルは新しい日常へ変化しました。仕事の一部は在宅勤務へ、外出から帰ってきたら手洗いやうがいをするという習慣が固定化し、室内の換気にはより一層の注意を払うようになりました。また、外出よりも家で楽しむというトレンドが支持されています。

このような新日常は、住宅の設計に影響を与えています。設計者や専門家が考えた最適解によって、住宅の間取りやデザインは変化しています。そして、そのなかから多くの方の賛同を得たスタイルがでてきてそれがトレンドとなり、さらに雑誌やWEB、SNSを経て拡散し、トレンドはより明確なものとなります。

これから紹介するのは、米国の煉瓦企業ACME BRICKによる今年の住宅トレンドです。今年もすでに半分が過ぎていますが、これらのトレンドの大半は2023年も引き続きトレンドであり続けると言えるものばかりです。なぜなら、まだまだコロナ禍も続き、また、世界は気候変動などの課題に直面しているからです。トレンドとは、住宅に限らず、世界が直面している課題に対応する答え(解)でもあるのです。

私たちが見逃すことのできない住宅設計におけるトレンドTOP10は(少し前の2022年のものですが)、以下のとおりです。

住宅設計におけるトレンドTOP10

1.持続可能性
2.健康な家
3.多機能性
4. バスルーム
5.アウトドアリビング
6.キッチン
7.家具は曲線の家具が好まれる
8. 在宅勤務のための仕様
9.ヘリンボーン
10.ミニマリズム

以上10つの項目について独自の意見を交えつつ説明します。

今回は1の持続可能性についてです。

持続可能性

「持続可能であること」はいまや社会のあらゆるものに求められます。そのため、家を建てる際にも、持続可能性に配慮した企業や建築事務所を選ぶことは、米国で大きなトレンドとなっています。それは時に、そういう余裕があるのだという周囲へのアピールにもつながるため、知識層など一定の層で特に人気の高いトレンドであり、一方で、持続可能な構造や要素に対する自治体の助成金の申請のために、一般にも広く浸透しているトレンドとも言えます。

「持続可能な家」を求めるならば、それについて言及しているかかどうかが、最初の選択しとして大事だということです。しかし、持続可能な家とはいったいどのような家のことなのでしょうか。

これは難しい問題です。
1つは、エネルギー効率について論じているかどうか、従来比で削減が実現しているのならば、持続可能な住宅とみなすことができるという見方があります。
家の維持費や光熱費などが、同程度の他の住宅よりも少なくて済むと仮定されるなら、その住宅は、持続可能な家だというわけです。業界の指針がないため通常は、同じ企業の建てた住宅で従来比〇〇%削減などという形で、エネルギー消費率や熱伝導率、二酸化炭素排出率があらわされます。(あるいは、耐久素材を使っているので維持費がかからないといったような表記となります)。これらはひとつの持続可能性の指針となり得えるのです。

また、2つ目の持続可能な要素ですが、おそらくこちらの方がより一般的で分かりやすいかもしれません。
持続可能な住宅では、外壁を煉瓦や石などの環境に優しい自然の建建材の多使用へと転換します。実は、世界で煉瓦の住宅が人気な理由はここにもあります。

このとき木材は微妙な素材です。日本の木造建築は持続可能な家を作り出しますが、他方、木材生産のために森林を伐採することは、その森林でそれまで固定できていた二酸化炭素ができなくなることを意味するため、これは植林や他の利点と相殺しながら考えるべき問題であるのです。これは、焼成と乾燥で多量の二酸化炭素を排出する煉瓦が果たして持続可能なのか、という問題にも直結します(この真実については前回述べました)

いずれにしても、建材は、ひとつの視点から見るのではなく多面的に見て判断することが重要で、そうしつつ、煉瓦の住宅も木造住宅も持続可能性の実現を探っていくのが、これからの住宅の大きなトレンドと言えるでしょう。

建築材料は自然に優しいものを用い、周りの敷地では、芝生ではなく干ばつに強い種類の植物を植えた水やりをほとんどしなくてすむ造園の需要の増加が見込まれています。そして内装は、再生天然木や低メンテナンスのフローリングなど、天然素材の需要が高まると見込まれます。これが持続可能性のトレンドです。

次回は、2.健康な家から5.アウトドアリビングまでのトレンドを解説します。


フロンヴィルホームズ名古屋の手がける煉瓦の家
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▶著者情報/小出兼久

特定非営利活動法人日本ゼリスケープデザイン研究協会(JXDA)代表理事。ランドスケープアーキテクト(ASLA)。1990年代よりランドスケープにおける水保全の研究を始め、2003年の第3回世界水フォーラム京都会議では分科会「庭から水、世界を考える」を主催し、成果の発表と日本で初めてランドスケープにおける水保全の必要性を提唱した。2005年第10回ゼリスケープ会議(米国ニューメキシコ州)および低影響開発国際会議シアトル・アジア地域(米国ワシントン州)に日本から初めて出席。2010年には生物多様性国際条約フェア(COP10国際会議と併催)に出席し、以来、低影響開発の普及を目指して活動を続けている。ランドスケープアーキテクトとして雨の庭を実践した作品群は日本や海外で生物学的な受賞歴を持っている。

建物と庭のトータルデザインを手掛ける点でフロンヴィルホームズ名古屋とは考えがマッチし、特に煉瓦の家に関するプロジェクトに興味を持っていただき、コラムの連載が実現しました。
また、当社のフロントガーデンの一角に、日本初・名古屋初の「雨の庭」のモデルガーデンを施工していただきました。