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2024.01.25

小出兼久コラム

煉瓦物語/煉瓦の積み方

煉瓦物語/煉瓦の積み方

煉瓦の積み方(組積造)には多くのパターンがありますね。これも意外と面白いです。種類があり、それぞれに独自の外観や設置上の課題があり、そして、構造上の考慮事項があります。

壁を上下にも左右にも強くする、煉瓦の構造

煉瓦と煉瓦をつなげようとすると、同じサイズの煉瓦、少なくとも互換性のあるサイズの煉瓦が必要となります。煉瓦というのは通常、均一のサイズになっているので当たり前ではありますが、元をさかのぼれば「均一のサイズで組み上げる」って考え付いた古代の人、天才ですよね。
ある面積に対し、煉瓦を規則的に繰り返して積み上げることでその組積造が出来上がります。この結合パターンは、コースと呼ばれる煉瓦の各列を隣接するコースとつなぎ合わせる(接着する)ことで出来上がります。接着とはつまりモルタルのようなもので煉瓦の列と列をつなぎ合わせるのですが、ただ列としてだけ延々とつなぎあわせて上の列と下の列がモルタルでつながってなければ、列を上に積み重ねていくほど、簡単に倒れる可能性があがります。だから列と列の接着をするわけですが、これもまた、列と列の間で煉瓦の字接合部がずれるように積み重ねると、このような結合は、煉瓦の壁を上下にも左右にもさらに強くする強度を構造に追加してくれるわけです。
そして、自分で煉瓦を積み上げて壁や構造物を造ろうとすると、意外と盲点となるのがこの接合剤としてのモルタルで、モルタルを使用する場合は、モルタルの厚みと煉瓦単体のサイズ、それらを合計して壁のサイズになるということに注意をしてください。煉瓦を割ったりせずにきりよく積み終わらせるために、この計算は重要です。
一般的な煉瓦壁
煉瓦の壁というのは、耐力壁のように水平な荷重(地震や風)に耐えられる筋交いなどの構造をきちんともった壁もあれば、べニアの壁のように既存の構造物にタイルように張り付けた装飾的な壁もあります。前者の構造壁としては、ある種の構造的結合が必要ですが、装飾壁としてならば、構造や耐久性は元々の躯体に任せてしまえばいいので、煉瓦の張り方、その結合パターンはより自由なものとなります。壁に使用される煉瓦の結合パターン、いわゆる〇〇ボンド(ボンドというのはつながりという意味)というのは、古くから、多くの種類が開発されてきました。そのなかで、以下に、伝統的で人気のあるパターンをいくつか示します。

目次
ランニングボンド
コモンボンド
イングリッシュボンド
フランドルボンド
スタックボンド

ランニングボンド


ランニングボンドというのは、極めて古典的かつ伝統的な煉瓦のつなぎ方で、比率1対2のパターンです。列につないだ煉瓦は、上下の列で、1/2ずつ長さをずらされて積み上げられます。こうすることで、煉瓦と煉瓦のつなぎ目(モルタル)は上から下へ直線とならず、あみだくじのようにジグザグになります。構造的に強くなるため、煉瓦の壁を造るさいに、もっとも一般的に使われるシンプルな構造の積み方です。どの煉瓦も、長辺を外側に向けて縦に並べられています。それゆえ、ストレッチャーボンド(長手面積み)とも呼ばれます。

コモンボンド


ランニングボンドに似ていますが、違うのは、数列ランニングボンドを積んだ上に「ヘッダーブリック(煉瓦)」(小口を外側に向けて配置された煉瓦)を積むことです。それからまたランニングボンドを同じ数の列積み、そしてヘッダー煉瓦を積むというパターンで造られています。普通は、ランニングボンドで積む列を手前、奥と2列にし、ヘッダーレンガの端を平らにします。つまり、2倍の厚さの壁に使用されます。この時のランニングボンドの列の数ですが、3列から5列にしたり、あるいは、6列おきが正式だという文献もあります。どの場合も、3列おきと決めたらずっとその方法でというように列の数は一定にします。

イングリッシュボンド


いわゆるイギリス積みと呼ばれる積み方です。こちらもコモンボンドと似ているのですが、ランニングボンドとヘッダーブリックの列を交互に使用します。この場合男2倍壁に適しています。

フランドルボンド


フランス積みと呼ばれる積み方です。煉瓦をひとつ長手面をこちらに向けておいたら次は小口面を向けておくというように1列のうちで、長辺と小口が交互に配置される方法です。この場合も2倍壁に適しています。
ます。

スタックボンド


接続面をずらさないで、煉瓦の長手面を延々とつないでいく積み方です。ですから煉瓦はグリッド状に配置されています。接続部分が列でずらされるということはありません。構造的には他のやり方のように、接続部分がずれていたほうが強いので、こちらは主に装飾的な内壁に使用される非構造ボンドです。

まとめ
積み方ひとつとっても、ひとつの進化形あるいは応用形がまた別の積み方になる、という成り立ちが面白いと思うのです。そして煉瓦の積み方は、それだけが変わってもその構造物の印象が異なってきますから、どの積み方で煉瓦構造物を造るか決めるという行為は楽しいものなのですが、ここで煉瓦の周囲に緑があるとまた、その考え方(選び方、あるいは決め方)も異なってくると注意してください。これはとても興味深いことです。

著者情報/小出兼久

特定非営利活動法人日本ゼリスケープデザイン研究協会(JXDA)代表理事。ランドスケープアーキテクト(ASLA)。1990年代よりランドスケープにおける水保全の研究を始め、2003年の第3回世界水フォーラム京都会議では分科会「庭から水、世界を考える」を主催し、成果の発表と日本で初めてランドスケープにおける水保全の必要性を提唱した。2005年第10回ゼリスケープ会議(米国ニューメキシコ州)および低影響開発国際会議シアトル・アジア地域(米国ワシントン州)に日本から初めて出席。2010年には生物多様性国際条約フェア(COP10国際会議と併催)に出席し、以来、低影響開発の普及を目指して活動を続けている。ランドスケープアーキテクトとして雨の庭を実践した作品群は日本や海外で生物学的な受賞歴を持っている。

建物と庭のトータルデザインを手掛ける点でフロンヴィルホームズ名古屋とは考えがマッチし、特に煉瓦の家に関するプロジェクトに興味を持っていただき、コラムの連載が実現しました。
また、当社のフロントガーデンの一角に、日本初・名古屋初の「雨の庭」のモデルガーデンを施工していただきました。