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健康な庭づくりのためのヒント【第15回 秋から冬の色 太陽と庭の見え方】

健康な庭づくりのためのヒント【第15回 秋から冬の色 太陽と庭の見え方】

白と海老茶(赤系)

庭のモミジや柏葉アジサイの葉が赤く色づいています。山茶花が咲き、柚子も実る一方で、シュウメイギクの花は終わり、ススキや多くの草木は枯れ、庭はもの悲しくなってきました。そこで先日、庭に色を足そうとしてビオラを植えてみました。今年は、海老茶が気に入っています。秋から冬にかけての時期は、不思議と暖かみのある色に目がいきますね。それから質感も大事で、産毛の生えた灰緑色の肉厚の葉を持ったシロタエギクとか、ベルベットのような海老茶のビオラ、どちらも暖かさを連想させるところがいいです。


そんな白と海老茶をメインに壁面を飾るタペストリーを植物で作ってみました。下地は特製の不織布ポケットで、白の葉はラムズイヤー、シロタエギク、シクラメン、ロータスなど、それと赤い花のシクラメン、赤い実のゴーチェリア、赤い葉のツルコウジの白と赤を組み合わせています。間に、斑入りや海老茶、紫葉などさまざまな葉色の品種を持つツボサンゴを植えて空間に統一感を出しました。これは一例ですが、緑の葉に雪が降ったかのように見える冬の白銀とシックな赤の組み合わせは、この時期ならではのものです。

秋には秋の色が似あう
秋から冬にかけて暖かな色が好まれるのは、周囲の木々の葉が赤や黄に紅葉する美しさと、それに合わせて周囲も暖色系の色が欲しくなる(おさまりが良くなる)ことや、個人の好みや寒さなど複数の理由はあると思いますが、秋の日差しにこうした暖かな色が映えて見えるということもあります。

日差しは1年中同じように注いでいるわけではなく、季節によって変化します。夏の日差しが一番上の角度から差し込みますが、冬の日差しは逆に、低い角度で差し込みます。例えば窓のある南向きのリビングに居て、同じ部屋でも冬は日差しが長く、部屋の奥まで差し込むという経験をした覚えがある方もいるでしょう。

太陽の動きは、庭の色の見え方を変化させます。

冬の太陽高度は低く、春は高く、一番高いのが夏になります。太陽が高くなるにつれて光は眩しく、目にきつく感じられるようになります。淡い色の花は太陽が高く昇るにつれて脱色したように、白っぽく平坦なものに見せてしまいます。太陽高度が高いほど、濃い色の花が引き立って見えるようになります。春や初夏の太陽にはパステルカラーの花々が似合い、夏の高度の太陽にははっきりしたブーゲンビリア、ダリア、サルスベリのような濃い色の花々が似合います。

秋の太陽高度は春ほど高くありません。この放散する(外側へ拡散する)水平方向の光の下では、柔らかな色の微妙な部分まで十分に認識することができます。秋の光の中では、淡い色の機微や柔らかな質感は映え、大胆で鮮やかな色は仰々しく映りがちです。しかし、夕日が空を赤く染めると周囲のものが赤く見えるようになりますね。これと同じようなに秋から冬への低い高度の日差しは、暖かな色味をより際立たせてくれます。

なるほど。よく考えたら、春、夏、秋と、実際に私たちが見かける花のスケジュールはそれを良く見せる太陽の光の高度と合っていますね。こういうところに、私は自然の不思議さを感じます。そして、地域の庭園文化も気候と共に発展していることを思い出しました。

英国のイングリッシュガーデンは、曇りがちな英国の空にとてもよく似合います。実は明るい日差しよりも曇りのほうが、庭の花々はより映えて見えるのです。そのため、曇りの多い地域ではやわらかい色の植物に優先順位があります。イングリッシュガーデンが日本でなかなか表現できない理由は、こんなところにもあります。

太陽の動きと庭の配置
太陽の動きを考えて、植物をどこに植えるのかを決めていくのがガーデナーですが、以上の話から、早朝から午前中は、曇りの日と同様にパステルカラーや白い花を一番美しく見せるということが分かると思います。日射しが強くなるにつれて、パステルカラーは冴えない色に見え始め、昼になると、赤やオレンジなどの濃い太陽に負けない色が美しく見えるようになります。そして、夕方が近づくと、周囲の物が赤く見えるようになりますね。これは植物にも同じ効果を与えます。

つまり、美しい庭、見栄えのする庭を作りたいと思うのならば、太陽の動きにも気をとめるべきです。まとめると、春から初夏にかけては、白・ピンク・藤色などのパステルカラーの庭や白の花のみを集めたホワイトガーデンが似合い、夏は濃い花の庭が、秋は暖色系の色で構成された庭が似合います。1年草ならば、植え替えのスケジュールをこの法則にのっとって行います。

そして配置の問題ですが、これらの庭を1日の太陽の動きに合わせて配置するのです。例えば、ホワイトガーデンを作りたいのならば、朝から午前中にかけてよく日の当たる場所が適しています。なぜならば、実際には、ホワイトと言っても雪のような真白から乳白色、クリーム色まで微妙なニュアンスを含んでいることが多く、この微妙なニュアンスを良く認識させてくれるのが朝の光なのです。有名なイギリスのシシングハーストのホワイトガーデンも、この例にもれず午前中の日差しの中でみるのが最も美しいとされています。

=追伸=

お庭の相談を受け付けますのでご遠慮なく。

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

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Email. k.koide@docomo.ne.jp