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小出兼久の煉瓦物語 【第31回 煉瓦と煉瓦住宅と持続可能性-英国事情のまとめ

小出兼久の煉瓦物語
第31回 煉瓦と煉瓦住宅と持続可能性-英国事情のまとめ

前回まで数回にわたって(27、28、30回)、煉瓦は持続可能な目標を達成できるのか、煉瓦住宅は持続可能な建築であるのか、違うならば持続可能な建築であるためにはどうしたらよいのか。ということについて触れてきました。各話は一部の内容が重複しており、その一方で、一部の内容は新しいことを述べています。これは、煉瓦と持続可能性の問題はさまざまな側面から評価すべきでもので、煉瓦は持続可能ではないと即断できない理由があったからです。

今回もそうした過去の内容と重複しますが、ここで情報を整理してまとめておきます。これは、そうすることで、他の業界でも持続可能性な目標を達成するためのヒントとなるのではないかと考えるからです。

持続可能な建築のための思考
英国に煉瓦開発協会(BDA)という組織があります。名前のとおり煉瓦とセメントを用いた開発(建設)のための協会ですが、全英の15の企業が加盟しており、それらで煉瓦生産の100%を占めています。この協会が取り組んでいることのひとつは、持続可能な建築を煉瓦建物で実現することなのであり、そのために煉瓦の製造工程の変化を受け入れています。あるいは、変化する必要があると説いています。その際、二つの方向から分けて考えることを勧めています。

建設プロセスと建物の両方から持続可能性を追求する
二つの方向とは、ひとつは、煉瓦製造プロセスの持続可能性を実現することです。そして、もう一つは、そうして出来上がった建物自身の持続可能性を評価することです。この二つは混同されやすいのですが、それぞれに分けて考えることで、より緻密なレベルで、持続可能性を達成することができるのです。

まず、プロセスの面では、煉瓦の製造における持続可能性を評価します。具体的には、窯などの技術(機械)、原材料、エネルギー使用量、炭素排出量、廃棄物排出の有無、水使用量、生物多様性の達成の可否、福利厚生などの煉瓦製造にかかわる様々なテーマについて、煉瓦の持続可能性報告書を作成します。この教会では2001年からそれを行っていますが、その中でKPIを精緻に設定することを勧めています。KPIというのは重要業績評価指数といい、ある組織(企業体)が目標達成のために実行するプロセスというのが、適切に実施されているかどうかについて、数値化して評価するものです。

例えば、煉瓦の焼成時に排出される二酸化炭素の量を減らすことが、持続可能性につながると判断したとします。このとき、「排出量を30%削減する」と具体的に設定した数字がKPIであり、KPIを設定することで、次にどのような行動をとればよいかがはっきり分かるようになります。そして、さまざまな窯を比べるときにも、評価基準を統一することができるようになります。

「二酸化炭素を3割削減」と分かりやすい目標がでれば、それは組織が団結してその課題に取り組むことを促します。さらに、各メーカーのデータを統合して、共通の目標を設定することも容易になりました。二酸化炭素の排出を削減するその目標数値を達成するために、煉瓦の場合は窯の技術革新を行ったり、焼成や乾燥に使うエネルギー消費量を見直したり、原材料の使用量を(既存製品をリサイクすることで)抑えたり、製品の寿命を延ばすことを考えたりすることができます。また、国内サプライチェーンのように既存の強みを認識することも、このプロセスの一部です。

英国のこの協会が率先して行っているのは、EUの(2050年に半分にするという)二酸化炭素排出イニシアティブへの加入はもとより、原材料を地元で調達し、地元で生産し、地元で現場まで輸送し、煉瓦内部の炭素体積をできるだけ低く抑えることなどです。これらが、二酸化炭素排出量を削減するカギとなるからです。煉瓦を焼くには、通常900℃から1200℃の高温が必要で、およそ2日もかかり、相当なエネルギーが必要です。しかし、煉瓦焼成時の廃熱は、煉瓦を乾燥させる製造工程でも再利用されており、煉瓦に含まれる炭素は、ひとたびそれが建物として完成すればその後、長い間煉瓦内部に存在し続けることができます。英国煉瓦開発協会は、その会員である15の企業合計で、年間約20億個というかなり安定した生産量を誇っていますから、そこでの煉瓦製造プロセスの革新と進歩は、煉瓦の持続可能性の実現に向けて、大きな前進をさせるものでしょう。

(次号に続く)

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

BLOG :http://koidekanehisa.thyme.jp/koide/
Email. k.koide@docomo.ne.jp

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