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小出兼久の煉瓦物語 【第16回 煉瓦の耐久性維持のために(2)】

小出兼久の煉瓦物語

【第16回 煉瓦の耐久性維持のために(2)】

煉瓦造りの建物など構造物の耐久性を考えるにあたって必要な視点を、補足しておきます。煉瓦造りの劣化を招く要素についていかに列挙します。前回の続きとなりますので、ご参考ください。

1.水の飽和と気候への露出
煉瓦造りの壁の水の飽和は、それが気候にどれだけさらされているかということによっても、その後の影響が変わります。例えば、豪雨にさらされることが多い地域では、水の飽和を最小限に抑えるような工夫を施した建築上の特徴、例えば、前回挙げたように、建物のひさしや突き出しを深く張り出させて外側の煉瓦壁を護るとか、あるいは、ハンギングタイルの方法で煉瓦を張るとか、外の煉瓦壁の場合には笠石を置くなど、煉瓦積み自体への必要な処理の他に、ディテールの設計が重要になります。

2.地面との接触と煉瓦造り
また、気候だけでなく、土壌や地下水にも注意を払う必要があります。特に土壌や地下水中の硫酸塩の存在は、地下の防湿層の耐久性に大きな影響を与える可能性があります。煉瓦とモルタルの素材自体の選択は特に注意をすべきで、また、脆弱な場所として地面と接する防湿層や基礎の部分、自立型の壁、擁壁、煙突の先、笠石、煉瓦が長期間にわたって飽和状態のままになることが多いということを知っておいてください。

3.適切な再生/リサイクル煉瓦の使用
再生/リサイクル煉瓦の使用についても注意が必要です。リサイクル煉瓦は、持続可能性という観点から見れば優れたものと言えるのですが、それ自体の前身がどうであったのかについて、もっと注意をすべきものです。例えば、もともと内部の壁材として使用されていた耐霜性のない煉瓦が、リサイクル煉瓦として生まれ変わった後に外部で使用される可能性についても忘れないでおくべきです。したがって、再生/リサイクル煉瓦は、注意して使用することをお勧めします。

4.耐久性と技量
モルタルの準備と煉瓦積みの両方における技量の質は、煉瓦の長期耐久性を達成するためにはきわめて重要な要素です。これについては長くなるので今回はこの一行に留めますが、専門工の育成は必要で緊急の課題と言えるでしょう。

5.霜と煉瓦の破壊

霜によって煉瓦造りが破壊されることもあります。これは、0度の水が同じ温度で氷に変換されるときに発生する体積の9%の増加によるもので、つまり膨張です。煉瓦とモルタルが飽和して凍結すると、細孔空間内の水の膨張により、耐えられない応力(物体の内部に生じる力の大きさ)が発生します(一部の煉瓦とモルタルでは、膨張が発生する可能性のある細孔構造内のアクセス可能な空間が制限されることで、霜害のリスクが大幅に減少します)。

気をつけたいのは、霜が降りるのは、必ずしも最も寒い冬や最も雨の多い冬ではないということです(春の霜で野菜が大きな被害をうけることを経験した人もいるでしょう)。そして、煉瓦における霜被害とは一度の霜で発生するものではなく、この問題は、水が飽和した煉瓦の凍結と解凍サイクルが繰り返されることにあります。こうして、レンガの表面が剥がれる可能性があり、また、モルタルの接合部も崩れる可能性があります。

ということで、製造業者は、レンガの耐霜性の指定を宣言しておく必要があります。煉瓦の耐凍害性を評価する試験方法もあります。煉瓦積みは、冬の建設中に特に危険にさらされており、この時期、夜間に落ちる霜は一般的な現象であるため、温暖な冬であっても、現場の煉瓦造りや現場に保管されたままのまだ組み込んでいない新しい煉瓦を、シートをかけるなど、水の飽和と霜の両方から適切に保護することが重要です。正しい比率で混ぜ合わせたモルタルを使っている場合でさえ、完全に硬化する前に霜を受けると、損傷する可能性があります。

6.硫酸塩による被害

硫酸塩による被害とは、モルタル目地の侵食や崩壊、膨張、湾曲などです。一般に、接合部や底部のモルタルのひび割れは、煉瓦造りが硫酸塩による攻撃を受けたときにあらわれる被害の特徴です。とはいえ、硫酸塩による被害は多くの条件が同時に存在したときに発生するもので、つまり煉瓦自体が破壊されることは比較的まれであると言ってよいと思います。しかし、硫酸塩による被害は、それが明らかになるまでに数年かかることもざらなので、厄介であることは間違いありません。

煉瓦造りにおいて、モルタルへの硫酸塩による損傷は主に、硫酸塩とポルトランドセメントのアルミン酸三カルシウム(C3A)成分との反応によって引き起こされ、これがスルホアルミン酸カルシウム(エトリンガイト)を形成します。この反応は、ポルトランドセメントにかなりの量のアルミン酸三カルシウムが含まれている場合にのみ発生します。そのため、 このリスクは、アルミン酸の量が制限されている耐硫酸塩ポルトランドセメントを使用することにより、大幅に低減されます。

以上、施工現場からのお知らせのように書いてみましたが、魅力あり、断熱効果などもある煉瓦の建物は細心の注意を払って建てられているのだということを知っていただければと思います。

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

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