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小出兼久の煉瓦物語 【第15回 煉瓦の耐久性維持のために(1)】

小出兼久の煉瓦物語

【第15回 煉瓦の耐久性維持のために】

ローマ時代あるいはそれ以前から今も現存する煉瓦の建物は、世界のあちこちに存在しています。これは、煉瓦建物の耐久性を証明していると言えますが、逆に言えば、そうした建物が多い地域では、このような昔から現存する煉瓦建物があれば、それが今でも耐久性を満たしていることを証明せねばならず、または、そうした建物を今後も存続させていかなければならないという問題を抱えています。これは、設計者や建築業者、建物の所有者にとって非常に重要な課題です。

「耐久性があるかどうか」 それは、すべての出来上がった「物」にとって極めて大事なことです。このことを煉瓦の建物について改めて考えてみれば、近代までの耐久性というのは、ほとんどが地理的に限られた社会の中での耐久性であったわけです。建物は輸送も限られた範囲での地元の煉瓦で建てられており、それには、地元でそれまで培われてきた伝統的かつよく試行されていた方法が使われて、地元で適切なディテール(仕様)で建設することが行われていました。しかし、近代から現代へと時代が移ると、この状況は一変します。現代の製造方法と、全国的に張り巡らされた道路と鉄道網によって、私たちは国内に限らず海を越えて豊富にある多種多様な煉瓦の原料や製造法、それによって造られる様々な煉瓦がどこででも利用できるようになりました。そこで、現代の建物に固有の長期耐久性を実現するには、煉瓦とモルタルの物理的特性、および、建物の一部が日光にどのように晒されるのかを考慮する必要があります。

こうした視点で日本もそうですが、英国の煉瓦建物など海外のそれらについても考えてみると、大変興味深いものが見えてきます。それは、それまでの地元の煉瓦と建築方法に関する知識と経験というのは地元の煉瓦業界で長年にわたって築き上げられてきたものであり、これを設計者や建築業者による幅広い集合的な経験が補完してきたということです。となれば、材料や煉瓦が地元ではなく他の地域や国から輸送されるようになったとしたら、地域でそれまで培ってきた施工方法や仕様では、適切に建てることができないという可能性もでてきます。耐久性は特に地域の気候が大きな影響を及ぼすので、それまでのマニュアルや指針では駄目なことがあるかもしれない、これが近代から現代への転換点となります。が、しかし、では、それまでの方法や仕様、マニュアルが一切無駄になるのかといえば、そうではありません。この一本筋の通った方法を元にして、気候にもしかしたら合っていない煉瓦材料を用いて、気候に合った施工方法を模索して確立していくというのが、もっとも効率よく適切な道となります。

煉瓦造りの建物の耐久性を考えるとき、最も一般的かつ潜在的な敵となるのは、水による飽和です。水の飽和は煉瓦の破損を招きます。これにどう対処したらよいのか。

答としては、適切な設計、適切な仕様および適切な技量によって、この問題を認識することで、現代の煉瓦造の建物を効果的にメンテナンスフリーにすることができます。

煉瓦の劣化は水の飽和から
煉瓦は多孔質なので目に見えない小さな孔がたくさんあいています。そしてそこに水が入り込み、水が飽和すると劣化の原因となります。水の飽和した煉瓦が劣化するのは、2つの理由が考えられます。ひとつは、煉瓦とモルタルの両方が飽和すると、凍結による損傷を受けやすいという点です。そしてもうひとつは、煉瓦が長期間にわたって水の飽和状態のままになると、適切なモルタルが使用されていない限り、硫酸塩によって接合部が損傷されていく可能性があるということです。

設計による飽和からの保護

で、この水の飽和という問題ですが、それを回避するために設計段階でさまざまな保護をすることができます。

水を侵入させないための煉瓦の張り方

笠木ならぬ笠石を載せた煉瓦塀

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

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Email. k.koide@docomo.ne.jp

山の中にある研究室