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小出兼久の煉瓦物語 第10回 煉瓦の未来

小出兼久の煉瓦物語

【第10回 煉瓦の未来】

煉瓦の壁というと普通はまっすぐな平たい壁ですよね。ブロック塀も木のフェンスもそうです。しかし、これらの材料が直線壁しか作れないと思いこむのは、性急です。特に煉瓦の場合、曲線の美しい建物も多くあり、それこそが私が煉瓦は「面白い」と感じた理由のひとつでもあります。四角い煉瓦によってデザインされる大きな可能性……ここでは、私が気になったものを二つ紹介します(現在はないものもありますのでご了承ください)。

米国を観光目的で訪れた方は行かれたことがあるかもしれません。ニューヨーク近代美術館通称MoMA(モマ)、米国で最大の現代美術の作品を収集・展示する美術館です。普段美術館に行かない方でもMoMAという名前はご存知なくらい有名ですが、実はMoMAには別館が二つあり、そのうちの一つが、旧Institutefor Art and Urban Resources Inc.、現在のMoMA PS1です。クイーンズ地区のロングシティ自治区(ニューヨークシティの中でも少しだけ田舎の地区)にあり、今日の米国で最も実験的で、示唆に富む芸術を紹介する現代美術館です。1971年に設立され、2001年にニューヨーク近代美術館と提携して現在の形になりましたが、敷地に特化した(その敷地固有の)芸術作品の適切な展示を旨に、当時廃墟であった建物を改修して始まりました。

さてMoMA PS1では、MOMA ヤングアーキテクトプログラムという企画が、1999年から毎年6月~9月の3ヶ月の間、開催されています。これは、新興の建築家に革新的なプロジェクトを設計し提示する機会を提供することを約束するもので、毎年の受賞者はMoMA PS1の中庭に、一時的にその受賞した設計の作品を建てることができます。この設計の条件は、日陰を作り、座る場所があって休息が取れるようになっていることと、水をどこかに使うということです。どうしてこのような条件となっているのかと言うと、完成したこのインスタレーションのある中庭を会場にして、野外ライブを(音楽の祭典)を行うからです(※コロナ禍でここ2年ほどはないようです)

写真は、2014年の作品です。上部がミラーになっている3MTM鏡面反射フィルムと有機煉瓦で造られた煉瓦建築で、丸みを帯びた構造をしています。デビット・ベンジャミンによって設計され、「Hy-Fi」と名づけられたインスタレーションです。ここで使われている有機煉瓦はトウモロコシと菌糸体から作られていてエコフレンドリーで、3MTM鏡面反射フィルムは、タワーの外観を印象的にするだけでなく、ミラー効果によって光を内側に向けてバウンスさせ、内側を明るく照らします。筒状に建築されたタワーは温かい空気を上へと吸い上げ、天井に空いた穴から暖気を外へと放出します。この二つの材料の組み合わせは、訪問者に印象的で居心地の良い空間を提供しつつも、エネルギー消費を抑え、本来なら燃焼で出るはずのごみを減らし、炭素排出量を少なくする材料で構造を作成しています。

他方、英国・バッキンガムシャーのグリムスダイクファームには、コーデ・ボシーがデジタル設計と手作りの煉瓦で造った構造物があります。設計は拡張現実/ ARヘッドセットを使って行われ、こうした建物を造る場合、熟練した煉瓦工でなければできないこの煉瓦の構造を、拡張現実/ ARヘッドセットを介して仲介されるコンピューター設計によって、現場で建設して造りました。三次元的なデジタルソフトの建築業界への適用は今後ますます増えていくでしょうが、この作品が面白いのは、最先端技術による設計と仲介を利用しつつ、手作りの不ぞろいな煉瓦を材料に、また煉瓦工の技術も活用しているところにあります。最下層では、レンガは互いに45度に設定されています。幾何学的な関係は徐々にパラメトリックにシフトし、レンガが上部で互いに平行になるようにします。

建設中、煉瓦工は煉瓦の各層に一度に1つずつ、ARのディスプレイを見ながら仮想の煉瓦を表示する場所に実際の煉瓦を配置していったというわけです。煉瓦と煉瓦の間にできるスペース(目地となる部分)は実際の煉瓦工が埋めていくので、出来はその習熟度に依存しています。このようなパラメトリックデザインは、最近の建築の主流であり、材料は無機質でも有機的な印象を与える建築物となります。このときに煉瓦を使ったその形は、歴史と未来、手作りの暖かみと無機質な冷たさ、ことさら相反する印象を内包する建築の面白さを伝えるものではないかと思います。

小出兼久の設計研究室では、庭の相談の他、あなたの庭の大きさに合わせたピザ釜の制作も承っております。

燃料(薪・木炭・ガス)に応じて釜の構造が異なりますので、詳細は打ち合わせください。(地域の法令で可能な燃料を使用いたします)

窯の大きさは直径30cmまでのピザなら焼くことができるもので、設置場所、デザインなどは庭に合わせたオーダーメイドです。お気軽にご相談ください。

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

BLOG :http://koidekanehisa.thyme.jp/koide/
Email. k.koide@docomo.ne.jp

山の中にある研究室