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小出兼久の煉瓦物語 第9回 持続可能な社会と煉瓦

小出兼久の煉瓦物語

【第9回 持続可能な社会と煉瓦】

世界では年にどのくらいの量の煉瓦が生産されているのか、調べてみると、実に、年間で15,000億個もの煉瓦が生産されていることが分かりました。特に中国、インド、パキスタン、ベトナム、バングラデシュといったアジア地域での生産が、世界の生産量のおよそ9割(うち中国が7割)を占めているそうです。
多くの煉瓦が製造されるのは、それだけ需要が高いということの現れだと思います。それをブームと呼んでいいのかどうかは、また別の問題ですが、世界で煉瓦が必要とされているのは間違いありません。しかし、だからこそ気になることがあります。それは、煉瓦がその製造プロセスで、多くの二酸化炭素やブラックカーボン粒子を排出すること。つまり、このことを理由に、煉瓦は環境を汚染しているのではないかと非難されてしまうことです。最近は、やれ、循環型社会だ、リサイクルだ、持続可能な開発目標(SDGs)だ、と環境に負荷を与えている活動は産業にとってもマイナスに働く時代です。世界のあちこちで今までにない気候災害が起き、酷暑で搬送される人がでたり、水不足が産業を直撃したりと、予測不可能な気候災害の報道を目にすることが多いです。世界の政府は気候変動による負の影響を世界は止めようと躍起になっています。
このような状況にあって、私は、煉瓦産業にも風当たりが強くなっているのではないか、時代にあった形に変えていかなければならないのだろうな、と思ったのですが、私の予測以上に、産業界は進んでいました。そして、思ってた以上に煉瓦産業が及ぼす世界への影響は大きいのだなと分かった次第です。
煉瓦はその製造プロセスで、多くの二酸化炭素を排出します。また、ブラックカーボン粒子も多く排出するのですが、こちらについては、煉瓦の製造と鉄鋼の生産における排出が、総排出量の20%を占めるのだそうです。ブラックカーボン粒子と言う言葉は、耳慣れない言葉ですが、いわゆる「すす」のことを言います。炭素を含む燃料、例えば、石炭の燃焼や、森林火災、ディーゼルエンジンの排気などから多く発生します。ブラックカーボン粒子は微粒子(エアロゾル)で、PM2.5のひとつでもあり、空気にのって長距離を飛ぶことができます。厄介なのは、これが多孔性のため、他の汚染物質や有害物質を取り込みやすいという点です。
従来の煉瓦の生産は、石炭や木材、その他のバイオマス材料を使用して焼成するものでした。そのため、二酸化炭素やブラックカーボン粒子を多く排出します。今はガスや電気に置き換わったり、技術革新が行われているそうですが、アジアとラテンアメリカの一部では今でも昔からのバイオマス材料による燃焼が一般的に見られます。この方法のなにが良くないのかというと、第一に非効率的なことが挙げられています。多くのエネルギーと粘土を必要とし、大量の粒子状物質、ブラックカーボン、二酸化硫黄、二酸化炭素、その他の汚染物質を大量に大気中に放出して、健康と環境に重大な脅威をもたらすことです。

煉瓦という製品自体には気候変動対策としての大きな可能性があります。(第5回を参照)これは、製造プロセスを差し引いても、大きな利益だとみなされています。

しかし、煉瓦の焼成を効率的な技術に切り替えることで、こうした汚染物質の排出を90%以上削減できるのならば、どうするか。(具体的には、プロセスや規模、使用する燃料によって削減幅は増減します)汚染物質の排出が少しでも少なくなるというのならば、煉瓦の焼成プロセスは、今の時代にあった形に変化させていかなければなりません。

ということを考えつつ、調べつつしていたら、従来のレンガ製造方法をクリーンアップするために、国際的にも地域的にもこの問題を広く認識させるための組織があることを知りました。それが、気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC: Climate and Clean Air Coalition)です。これは、メタンやブラックカーボン粒子などの短寿命汚染物質

(SLCP)の削減を目的に、2012年に設立された組織です。(温暖化抑制のためには、二酸化炭素だけでなく短寿命汚染物質の削減が急務なのだそうです)

CCACには現在、農業、 煉瓦製造、冷凍/空調、交通、家庭用エネルギー 石油/ガス、廃棄物、という7つのセクター(部門)がありますが、ここに「煉瓦製造」が入っていることを見て、私は大気汚染浄化にとって煉瓦製造の重要度が大きいことを再認識しました。

CCACは、煉瓦製造の近代化を支援するための煉瓦イニシアチブを出し、次のような取り組みを行っています。

  • 地球規模の専門家集団や地域の専門家集団をつくり、それぞれの規模で、煉瓦に関する科学的知識と技術、政策を統合する
  • 製造者などの関係者の地域における技術革新能力を強化する
  • 煉瓦の製造を近代化する政策改革を促進するために、政策立案者を問題に関与させる

このイニシアチブは、煉瓦の製造者と専門家および行政が協力して、伝統歴な煉瓦窯に従事する労働者の健康と労働条件を改善し、近くにすむ住民の健康を護るためのものです。それによって、地域社会の生活の質を向上させ、経済を維持あるいは向上させるという共同利益を伴いつつ、従来の煉瓦生産による汚染を削減する目的で出されています。

新しい技術への更新は、どの世界であれどの分野であれ、進む地域もあれば、すぐには進まない地域も多いでしょう(特に貧困が問題)。しかし、より安全な労働条件、生産性の向上、あるいは、その新しい技術によって使わずにすんだ土で農業の生産量が増えることなど、新しい技術は、煉瓦の生産者や地域社会に対して、社会的および経済的利益をもたらしてくれるものです。このため、CCACは途上国の煉瓦産業の新しい技術への転換を進めているのだそうです。

小出兼久の設計研究室では、庭の相談の他、あなたの庭の大きさに合わせたピザ釜の制作も承っております。

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窯の大きさは直径30cmまでのピザなら焼くことができるもので、設置場所、デザインなどは庭に合わせたオーダーメイドです。お気軽にご相談ください。

小出兼久 ランドスケープアーキテクト,ASLA, 岡山県立大学非常勤講師

BLOG :http://koidekanehisa.thyme.jp/koide/
Email. k.koide@docomo.ne.jp

山の中にある研究室