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2024.03.25

小出兼久コラム

煉瓦物語/循環型経済の意味と煉瓦

循環型経済について

現在私たちが行っている経済活動は、資源を消費してモノを生み出し、用がなくなれば廃棄するという「take→use→waste」という一方通行の道路ですが、これに対し循環型経済というのは円環です。終わりもなければ始まりもなく、円の経済とはその中で完結している経済で、資源を使ってモノを作っても、それが壊れたり不要になったりしたら、違う形での再利用やリサイクルをさせる、あるいは原材料へと再び変換して再生製品をつくる、円の道の経済のことです。

この循環型経済は、企業や社会、環境に利益をもたらすよう設計された、経済発展への体系的なアプローチで、再生可能を主とし、継続すれば、経済の成長が資源の消費から切り離されていきます。つまり資源を新しく採取して消費することがどんどん少なくなります。循環型経済というのは、有限である資源を最大限に延命させる方法であり、地球への負荷を最小限に抑える経済だと言い換えることもできます。

ふと、以前、パーマカルチャーという思想を学んだことを思い出しました。私はランドスケープアーキテクトです。都市計画、環境緑化、開発計画、ガーデンデザインなどをしていますが、その中で、オーストラリアから生まれたパーマカルチャーという思想と方法にひかれたことがあります。一言でいえば自然と共生する暮らし。無駄な廃棄物は出さずすべて循環する。畑で作物を作り、家畜を飼い、家は気候と自然の環境条件を考慮した配置と間取りで、そのコミュニティの中でゴミを出さずに循環させる。それを目の当たりでみて、実践している講師の話を聞いて、都市では無理だ、難しいと思ったことがあります。これはパーマカルチャーを否定するものではありません。今から30年も前の当時では特に「デザイン」との融合を目指していた私にとって、難しいものであったのです。

ですが、翻って、今思うのです。世界はもはやあらゆるものが、「循環」という切り口でプロセスを回さないとならないほどに追い詰められているのではないか。と。

循環型経済とは、すべてものについて、その循環のプロセスを構築せよ、ということです。ペットボトルや古紙、衣類、私たちが使っているボールペンもガラス瓶も、植木鉢も化粧品も、なにもかもを回収だけでなく循環という輪の中に組み込むよう、製造から廃棄そしてまた製造へのプロセスを設計することが必要となっています。

ある意味、息苦しさを感じるかもしれません。なぜなら、なにからなにまで、いかにゴミを出さない方向でアプローチするのかということを考えなければならないのですから。

建設ゴミから作られた煉瓦が開発されています。これは、循環型経済に組み込むことのできるもので、従来の焼成レンガの10分の1程度しか二酸化炭素を排出しません。イギリスのメーカー、ケノテック(Kenoteq)の共同創設者ガブリエラ・メデロは、人間が作った空間の環境が自然に大きな影響を与えており、それはイギリスを例にとるなら、全二酸化炭素排出量の約45%、つまり全排出量の約半分ほどが、人工的な空間から排出されているそうです。人工空間とは住宅や施設、商業ビルなどのあらゆる建物のことで、ですから、建物に関連して排出される二酸化炭素の量をいかに減らすかというのが、一昨年の11月に開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議COP26)の議題でも高い関心のものであり、1日丸々使って討議されたことは、建物の低炭素化が今後大きな課題になるという意味でもあるでしょう。
そこに、煉瓦はどう絡むことができるのか。次回は低炭素建物や低炭素煉瓦について考えてみたいと思います。

フロンヴィルホームズ名古屋の手がける煉瓦の家
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▶著者情報/小出兼久

特定非営利活動法人日本ゼリスケープデザイン研究協会(JXDA)代表理事。ランドスケープアーキテクト(ASLA)。1990年代よりランドスケープにおける水保全の研究を始め、2003年の第3回世界水フォーラム京都会議では分科会「庭から水、世界を考える」を主催し、成果の発表と日本で初めてランドスケープにおける水保全の必要性を提唱した。2005年第10回ゼリスケープ会議(米国ニューメキシコ州)および低影響開発国際会議シアトル・アジア地域(米国ワシントン州)に日本から初めて出席。2010年には生物多様性国際条約フェア(COP10国際会議と併催)に出席し、以来、低影響開発の普及を目指して活動を続けている。ランドスケープアーキテクトとして雨の庭を実践した作品群は日本や海外で生物学的な受賞歴を持っている。

建物と庭のトータルデザインを手掛ける点でフロンヴィルホームズ名古屋とは考えがマッチし、特に煉瓦の家に関するプロジェクトに興味を持っていただき、コラムの連載が実現しました。
また、当社のフロントガーデンの一角に、日本初・名古屋初の「雨の庭」のモデルガーデンを施工していただきました。